2009年10月7日水曜日

熊川哲也の跳躍

以前彼が全盛期の頃だと思うが、彼のバレエを見たことがあって、その時は技術的に言えばものすごいんだろうけど、どうも何も伝わってこない感じがしてあまり惹きつけられなかった。

昨日、彼が自分で振り付けをしたベートーベンの第九のほんのワンシーンが映ったのだが、前とはまったくちがって、厚みを感じさせるいい跳躍だった。大きく跳んでいるわけではないのに、いままで見たことがないような美しいシーンだった。ひざに大怪我をした彼が聞いたら喜ぶかもしれない。怪我のつらい経験も、第九を振付けたことも確かに実になっていると思わせた。

たぶん美は技術だけでは不足で、もっと多くのものを要求するものなのだ。